「よっしゃ、ブルーにします」
「ちょっ、俺、責任ものじゃないですか」
焦る良太に笑顔を向けると、天野はブルーで揃えたゴルフセットを買い、ゴルフバッグをひょいと肩にかけると、良太は天野が購入したウエアなど一揃いのグッズが入った紙袋を手にゴルフフロアを後にした。
「さて、ちょっと飲んで帰りますか」
ハンドルを握ると、天野は言った。
「え、運転してるじゃないですか、天野さん」
「お弁当は美味しかったけど、ちょっと小腹もすいたし、良太さんは飲めるでしょ? 俺は今日はノンアルにしときます。付き合ってもらったお礼です」
「だって、俺、ドジャーブル―って言っただけですよ」
良太は苦笑した。
「良太さんが付き合ってくれたから気分よくゴルフセット買えたんです」
「はあ」
実際気分よさげに軽快にハンドルを切る天野を横目に見て、まあ、出演者に気持ちよく仕事をしてもらえるのならいいか、と良太は思う。
天野が良太を連れて入ったのは青山通りを一本入った通りにあるアジアンテイストな店だった。
青山プロダクションからも近いが近年開店したこの店に良太はまだ入ったことはなかった。
シーリングファンが回る天井が高く、客層は仕事帰りの社会人が多い。
「ここの酸辣湯いけますよ」
天野が言った。
「前に打ち上げで来てからちょっと俺的にはブームなんです」
アジアン料理というだけあって、パインミーありフォーありで、良太はチキンフォーを頼んだのだがこれがまた美味かった。
「そうそう、部屋決めたんです。こないだ話していた久保田公博のマンション」
「え、それはよかったですね!」
良太も少し気になって前に調べてみたが、人気俳優の久保田公博が住んでいただけあってセキュリティは万全のようだ。
「ここから歩いても行ける距離なんで、来月の頭に引っ越し祝いしましょうよ」
「はい。その時はまた呼んでください」
天野に合わせてノンアルコールビールを頼んだのだが、これがまた美味かった。
「アルコールなしでも全然いけますね。今度、藤堂さんにも教えてやろう」
相変わらずプラグインも青山プロダクションと張り合うように忙しいようだ。
「藤堂さんって、代理店の?」
「ええ。食通っていうか、美味しいものに目がない人だし」
「親しいんですか? 良太さん」
「まあ、そうですね。うちとの仕事多いし、よく美味しいパティシェリのプリンとか持ってきてくれるんですよ」
こないだ持ってきてくれたマンゴープリン、美味かったな、などと良太は藤堂の茶目っ気な表情を思い出していたが、ふと、天野の顔から笑みが消えているのに気がついた。
「どうかしました?」
良太が尋ねると、天野は「いえ、良太さんのファン、多いですよね」などと言う。
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