支払いをもってくれた沢村とは店の前で別れ、沢村につき合ってさすがにつぶれたかおりをタクシーで先に部屋まで送っていくと、良太と肇はタクシーに戻った。
「お前も一緒に部屋に行けばよかったじゃないか」
少しの沈黙のあと、おもむろに肇が口を開いた。
「へ?」
今度は肇に予想外の言葉を言われて良太は面食らう。
「だいたい、前に三人で飲んだ時、せっかく俺が気きかしてかおりを置いて帰ったのに、なあんもなかったって?」
「おい―――」
まさかそんなこととは良太は思っていなかった。
いつぞや三人で飲んで良太の部屋に来た時の話だ。
へべれけに酔っ払っていた良太は、部屋にかおりがいるのに驚いたことがあった。
「このままだと、沢村がかおりにちょっかいだしかねないぞ? ラインなんか交換したりして。沢村は悪い奴じゃないが、かおりが泣かされるのは目に見えてる」
妙にむっつりしていたのはそんなことを考えていたからか。
良太は肇を振り返った。
「―――肇、気をまわさせて悪いが、俺とかおりはどうにもならないよ」
「何でだ? かおりはまだお前のことが好きなんだぞ?!」
肇は語気を強める。
「俺、―――好きなやついるし……………」
「つき合ってるのか? じゃあ紹介しろよ」
「いや、それは………」
ちょっと紹介しづらい相手なのだ。
「紹介できないような相手なのか? まさかタレントとか女優とか……」
「んなんじゃないって、でもな……」
「よもや不倫とかじゃねーだろーな? お前、大学の時、エースとか言われていい気になって、女に遊ばれてたみたいだが、やめとけよ、お前にはそんなの似合わねぇ」
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