夢ばかりなる14

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「えじゃないだろ、聞いていたのか?」
 工藤の叱責が飛ぶ。
「き、聞いてましたよっ!」
 うっかり千雪に見とれていたお陰で、ちゃんと聞いてませんでしたとは口が裂けても言えない。
「あとは飯、食うてからにしまひょ。もう腹ぺこやし。工藤さん、美味いもん食わせてやる言わはったから、俺、昼そこそこにしといたんや」
 千雪の一言で、良太にまだ何か言いたそうだった工藤は料理を運ばせた。
 千雪は出てくる料理をひとつひとつ美味そうに平らげる。
 いつもなら、健啖振りを発揮するのは良太の専売特許のはずだが、何を食べても味気ない。
 なんだ、美味いもん食いに行くか、って、別に誰にでも言うんだ、工藤…………
 そんなことを考えながら食べていたせいだろうか。
 『春の夜の』は、歌人をモチーフにした作品だ。
 西行やら実朝やら小野小町やら、歌人が詠んだ歌が謎を解く鍵、というのはよくある話だが、千雪はその歌人の生き方やその歌の想いにまで繊細な描写で綴っている。
 老弁護士とその助手が活躍するという設定は変わらず、助手の若手弁護士役は、無論、第一弾から好評を得ている青山プロダクションの実力俳優、志村嘉人である。
 良太が打ち合わせの話を聞いたのは昨日のことだ。
 相変わらず急な話で、夕べはまだ読んでいなかった『春の夜の』をざっと読もうとして、ついつい夢中になって明け方を迎えてしまった。
「でも映画になったらあんな繊細な描写は難しいですよね」
 食事をしながら工藤がいくつか千雪に確認し、千雪の方は、工藤があげたキャスティングにしても、何も異論はない、という感じで終始していた。
 そこへボソリ、と良太が口を挟むと、工藤も千雪も良太に顔を向ける。
「そういう繊細な描写を入れたいわけか? お前は」

 


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