夢ばかりなる16

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 打ち合わせを終えて店を出ると、今にも雨がこぼれ出しそうな空は重く、湿気を含んだ空気は急速に体を冷やした。
 三人は女将の手配したタクシーに乗り込んだ。
 車内では『パワスポ』のことなど聞いてくる千雪と良太が少しばかり言葉を交わしたが、助手席の工藤は口を挟もうとしなかった。
 やがて車は麻布に入り、千雪のマンションに近づいたらしく、その通りを右へ、と黙り込んでいた工藤が運転手に指示する。
 そんなことでさえ、工藤と千雪の親密さを見せつけられているような気がして、良太は胸が痛くなる。
 やはり工藤は千雪の部屋に頻繁に来ているのだろうか。
 仕事なんだからくだらないことは考えないようにしようと良太は自分に言い聞かせるのだが、どうしても気持ちがついていかない。
「あ、その外灯の辺りでいいです、中に入ると出にくいし」
 千雪が運転手にいうと、車はすっと停まった。
「ほなよろしゅうお願いします」
「お疲れ様でした」
「また連絡する」
 ドアが閉まり、車が動き出そうとしたその時、ばたばたと数人の足音が聞こえた。
 何だろうと良太が振り返ると、ちょうど後ろに停まった一台からまた一人降りようとしている男が見えた。
「停めてくれ!」
 工藤は言うが早いか、ドアを開けて飛び出す。
「なんや、あんたら!」
 千雪の声だ。
 良太も慌てて工藤の後を追う。
 五、六人の男たちが千雪に襲い掛かったかと思うと、千雪の腕を掴んで傍らに停めた車に引きずり込もうとしている。
「貴様らっ!」
 工藤が男の一人を引き剥がして殴りつけたが、三人がかりで工藤に襲い掛かり、その間に、二人の男が千雪を無理やり車に押し込もうとする。

 


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