夢ばかりなる19

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 翌日は午前中に下柳と一つ打ち合わせを済ませてオフィスに戻ってきたが、千雪を、いや、工藤を襲ってきた連中のことが気になって良太は仕事にならなかった。
 そうだよ、やっぱ千雪さん、危ないじゃないか!
 工藤が心配するのは当然だ。
『こいつ、ほんとに工藤のイロか?!』
『だろ? 激マブだってからよ、早くしろ!』
 工藤のことばかりで頭を一杯にしていた良太の脳裏に、男たちのセリフがよみがえる。
 千雪さんが工藤の『女』だと、思われたってことだよな? 暗かったし。
 どこかで工藤と千雪さんを見てたってことか。
 五時半を過ぎ、鈴木さんが帰り支度を始めた頃、工藤のホットラインの電話が鳴った。
 ここのところ鳴らなかったのだが、慌てて良太は受話器を取った。
「…………工藤はいない。おい、お前、一体何者だ? 工藤にどういう用件だ? 警察に言ってもいいんだぞ」
 良太はすごんで見せたが、相手はすぐ切ってしまった。
「……笑ってやがった?」
 密かに笑い声が混じっていた。
 珍しく八時少し前に工藤が戻ってきた。
「……あの、また電話ありました」
 工藤の視線が険しくなる。
「工藤さん、いないっていったら、すぐ切れたけど」
「そうか」
 あっさりと返事をして、工藤はとっととオフィスを出ようとする。
「ちょ、待ってください! 一体、あいつ何者なんですか!? こないだ襲われたことだって、やばいことになってるんなら、警察に……」
「警察に俺が泣きつけって? マル暴は俺の名前をリストからはずしたことはない」
 良太の言葉を遮り、淡々と工藤は言い放つ。
「余計なことは考えなくていい。とっとと部屋に行って寝ろ」
「余計なことって、なんだよっ!!」
 閉じられたドアに喚き散らし、良太は椅子を蹴飛ばした。
「ってーーー」
 椅子はびくともしないかわり、良太の足はしばらくじんじんと痛かった。

 


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