パソコンに打ち込まれたそれぞれのスケジュールをしばらく眺めてから工藤は、次から次へと良太に言い渡す。
「え、『藤永製菓』ですか?」
『藤永製菓』といえば、会社にとって大事なスポンサーのひとつだが、まだ良太は担当者に会ったことはない。
「ああ、『東神不動産』の浦野がまた面倒なことを言ってきたからな。それと、明後日、急遽、小笠原のロケに行くことになった。志村と一緒に顔出しておいてくれ。筒井には会ったことはあるな? それとホテル『オーニシ』の記者発表、秋山と一緒に行け」
あっと言う間に良太のスケジュール欄が塗りつぶされる。
打ち合わせが終わると、それぞれが目的地へ向かった。
コーヒーを飲むのもそこそこに工藤もでかけてしまうと、良太と鈴木さん二人のつかの間の静けさとなった。
秋山さんも難しい顔してたな。
今年は何だかみんなもきつそう。
明日からは自分も出ずっぱりになることを考えると、企画書やもろもろの書類を今日中にできる限りやっておかねばならない。
工藤とまともに口が聞けるのは明日くらいだ。
でも、話をする時間なんてあるんだろうか。
良太はため息をつく。
こないだも取り付く島がないってやつだった。
仕事が詰まっているのは仕方がないことだ。
けど、工藤、一人で動くのが多いってことだろう?
そんなとき、襲われたらどうすんだよ! こないだみたいに、何人もでこられたら……。
そういや、工藤、車ぶつけられたとか言ってたけど、何か空々しい言い訳だったよな。
あれもひょっとして………
考えれば考えるほど不安が募るばかりだ。
何もできないのが良太ははがゆくてしかたがなかった。
back next top Novels