夢ばかりなる22

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 翌日も、待ち合わせが外でなくてよかったと思うような風の強い日になった。
 十分遅れでやってきた工藤は路肩に停めてある車に良太を促し、日本有数の大企業の本社ビルが立ち並ぶ通りを、東洋商事へと急いだ。
 KBCテレビの創立記念番組は、巨大コングロマリット東洋グループ傘下の東洋証券とタイアップで進めていたが、親会社である東洋商事がそこに名を連ねてくれることになった。
 ドラマの撮影は、志村嘉人主演で既に始まっている。
 東洋グループ総帥は、グループ会長の綾小路大長で、大長の従兄弟にあたる綾小路徳俊が東洋商事の社長を退いたあと、パリ支社長を務めていた大長の長男紫紀が社長に就任することが決まっている。
 正式には四月からということだが、工藤がパリで紫紀と会う機会があり、ドラマのタイアップの話に乗ろうということになったのだ。
 その紫紀から一週間程日本に戻っていると連絡が入り、ぜひおめにかかりたい、と言ってきた。
「まだお前は会ったことがなかったか」
「パリでちらっと見かけたくらいです。…っていうと、あの京助のお兄さん、ですか?」
「そうだ」
 げ、あの京助のアニキか。
 弟の涼には初釜の時に会ったが、京助には似てなくて、いいヤツだったけどな。
 その社長、京助に輪かけてすげーヤツだったりして。
 つまり、千雪さんのお姉さん、じゃない、従姉の小夜子さんの、旦那か。
「奈々はどうだった?」
 ハンドルを切りつつ工藤が聞いた。
「いいものになりそうですよ。『藤永』の市川部長、えらく奈々のこと気に入ってくれてるみたいで。市川さんにはちゃんとご挨拶しときました」
「『山村』はどうだ?」
「ええ、幸村さんのお話では問題はなさそうです。一度食事でもということです」
「そうか、お前の空いてるときにセッティングしておけ」
「あ、はい」
 通されたのは、社長室続きの、おそらくただ仕事関係であれば通されることはないだろう応接間だ。

 


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