夢ばかりなる24

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「ちょっと今バタバタしておりまして、ここだけの話、社長が入院致しまして、急遽私がパリから呼び戻されたんです」
「社長が? それでお加減の方は?」
「狭心症の持病が前からあったんです。今は病室で元気に怒鳴り散らしてますよ。私の方は、取引先には、一応四月からとご連絡してありますが、事実上、当分パリと東京を行ったりきたりです」
「なかなか大変ですね。でも会長もいよいよ紫紀さんが戻ってこられるということで、何かと心強いでしょう」
「さあ、どうでしょうね。それより、噂の良太くんにお目にかかれて光栄ですよ。小夜子や涼からいろいろ聞かされてます。ドラマやCMにも出演されたとか」
 いきなり振られて良太はうっと言葉に詰まる。
「いえ、あれはほんのピンチヒッターでして」
「本業はプロデューサーでしたね」
 良太は赤くなる。
 名刺には確かに秘書のほかにプロデューサーという肩書きはあるのだが。
「いえ、まだほんの駆け出しで……」
 本題のドラマについても少しばかり話したが、紫紀との打ち合わせは終始和やかな中に終わった。
「落ち着いたらまたぜひうちに遊びにいらしてください。もちろん、良太くんも」
 最初はかろうじて広瀬さん、だったのだが、途中からすっかり良太くん、に定着してしまったらしい。
「連絡は入れる」
 一階で降りる良太にひとこと言い置くと、工藤はそのままエレベーターでパーキングがある地下へと向かった。
 案の定、工藤と話ができたのはほんのわずかだった。
 良太はぽつねんとひとりロビーに残された。
「ちぇ……」
 東洋商事を出た時は三時を回っていた。
 良太も慌てて丸の内線に続く階段を降りた。

 


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