夢ばかりなる28

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 昨夜から降り続いた雨は夕方になって少し小降りになった。
 どんよりと重く暗い空がビルの狭間から覗いている。
「冷えてきたな」
 こんな日は、ただでさえ渋滞になりやすいところへ一段と道路が混む。
 ワイパーが落ちてくる水滴を撥ねる。
 通り抜けられるかと思った信号が赤に変わったのを見て、良太は舌打ちした。
 ラジオの天気予報では、今夜の雨は東京でも雪に変わるかもしれないと言っている。
 雨のせいか窓の外のビル街は既に灯りがともり、薄暗い空を背景にネオンの色がやけにうるさく感じられる。
 今夜は何もなかったよな。
 久しぶりにナータンと遊んでやるか。
 午前中は志村の舞台の顔合わせのため小杉らに同行し、午後からホテルオーニシでアスカのドラマの記者発表に立ち合い、良太は結構疲れていた。
 アスカが出演する次のドラマだが、一週間ほど前の顔合わせで、自分が不在の時は広瀬に、と工藤が紹介してくれたものの、売れっ子とはいえ、脚本家の逐一注文をつけるくどくどしい言葉がまだ耳に残っている。
 アスカが、ばばあ、とか言いたくなる気持ち、わかるよ。
 思い出して良太は笑う。
 そろそろ沖縄から工藤戻ってくる頃じゃないだろうか。
 言ってくれれば迎えに行ったのにさ。
 明日は朝からまた大阪だったよな。
 そんなに動いてほんと、身体、壊すなよな。
 会社の駐車場に車を滑り込ませると、良太は一階の玄関ホールへと続くドアを開けた。
「せやから、ボディガード、紹介しますよって」
 ドアは螺旋階段の下に通じており、見上げると人影があった。

 


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