夢ばかりなる3

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「う~~~~~~~~!!」
 心の中で良太は地団太を踏む。
 こういう時、良太など、ただでさえ海千山千の修羅場を潜り抜けてきただろう工藤にはまだまだ太刀打ちできないヒヨッコなのだとあらためて納得せざるを得ない。
 あーんなオヤジがいい、なんざ、どこのどいつだ! まったくよーーー!
 自分で突っ込みを入れると、良太はすごすごと自分のパソコンに向かう。
 あんなオヤジ、工藤高広は、MBCテレビ時代から敏腕プロデューサーとして名を馳せ、実力がないと見たら容赦なく切り捨てる冷酷無比なやり方で知られている。
 しかも、この工藤という男には、縁はとっくに切れているとはいえ広域暴力団中山組組長の甥というあまりに特殊な生い立ちがあった。
 工藤はこのダーティな背景を背負いつつ、純粋な日本人ではないだろう端正な容姿や相手にものを言わせぬ切れすぎる頭脳でもって人生を切り抜けてきた。
 工藤が育ての親である曽祖父母から受け継いだ財を基に興した青山プロダクションには今までのところ、組関係のトラブルなどは一切ない。
 つまり、青山プロダクションのオフィスに時折たち込める暗雲の原因といえば、言葉にしたら下世話、の部類だろう、社長の工藤と部下の良太の喧嘩には痴話がつくくらいが関の山だ。
 そのせいで周囲の人間が迷惑を被っているのに気づいていないのは当の二人ばかりなり、というところか。
 平和という文字がぴったり合いそうな冬の日のひとコマだった。
 

 


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