頭、割れそう。
朝、胃腸薬は飲んだものの、昼も摂る気にはなれなかった。
二日酔いもいいとこで、自分の顔を鏡で見て、ひでぇ、と良太はつい口にした。
真っ青で今にも倒れそう、というやつである。
工藤はとっくに出かけたらしい。
夕べのことも何のフォローもなし、ね。
「良太ちゃん、大丈夫?」
「はは、すみません、もうちょっとで浮上しますから」
心配そうな鈴木さんに、力なく笑ってみせる。
それにしても、夕べ、俺、どうやって帰ったんだろう?
覚えていないのである。
とにかく朝、起きたら、自分のベッドで寝ていた。
上着とズボンはきっちりハンガーにかかっていたし、シャツの胸は開いていた。
まさか工藤?
でも工藤なら、鍵をドアの下から滑らせたりしない。
夕べ、誰かが隣に座っていたらしい気はするのだが。
波多野、さん?
うろ覚えの記憶を辿るが、はっきりしたイメージは浮かんでこない。
夢か現か、というやつだ。
まさかね、何で波多野さんが。
仕事で数回会っただけなのに、第一、俺の部屋知ってるわけないだろう。
だが、誰かに、送ってもらったことは事実だ。
参った……。
見知らぬ誰かに、部屋まで送らせたなんて。
たまたまその誰かが、いい人だっただけで。
盗られるものなどはないが、周りを見回しても、昨日と変わりはない。
昨日と変わりはない、か。
いまさらか。
俺の心がズダボロになろうが、今日は今日だし、明日もくるってことだ。
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