夢ばかりなる32

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 頭、割れそう。
 朝、胃腸薬は飲んだものの、昼も摂る気にはなれなかった。
 二日酔いもいいとこで、自分の顔を鏡で見て、ひでぇ、と良太はつい口にした。
 真っ青で今にも倒れそう、というやつである。
 工藤はとっくに出かけたらしい。
 夕べのことも何のフォローもなし、ね。
「良太ちゃん、大丈夫?」
「はは、すみません、もうちょっとで浮上しますから」
 心配そうな鈴木さんに、力なく笑ってみせる。
 それにしても、夕べ、俺、どうやって帰ったんだろう?
 覚えていないのである。
 とにかく朝、起きたら、自分のベッドで寝ていた。
 上着とズボンはきっちりハンガーにかかっていたし、シャツの胸は開いていた。
 まさか工藤?
 でも工藤なら、鍵をドアの下から滑らせたりしない。
 夕べ、誰かが隣に座っていたらしい気はするのだが。
 波多野、さん?
 うろ覚えの記憶を辿るが、はっきりしたイメージは浮かんでこない。
 夢か現か、というやつだ。
 まさかね、何で波多野さんが。
 仕事で数回会っただけなのに、第一、俺の部屋知ってるわけないだろう。
 だが、誰かに、送ってもらったことは事実だ。
 参った……。
 見知らぬ誰かに、部屋まで送らせたなんて。
 たまたまその誰かが、いい人だっただけで。
 盗られるものなどはないが、周りを見回しても、昨日と変わりはない。
 昨日と変わりはない、か。
 いまさらか。
 俺の心がズダボロになろうが、今日は今日だし、明日もくるってことだ。

 


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