諦めの境地で一つため息をつくと、今度は工藤と言い争っていた千雪の言葉が気にかかる。
ボディガードとか何とか、千雪さん、言っていたような……。
工藤のやつ、何も言いやがらないし。
『やつら』とか、千雪さん言ってなかったか?
千雪さん、知ってるんだろうか?
どこまでいっても自分は工藤にとっては蚊帳の外なのだ。
肝心なことは話してもくれないのだ。
くそっ!
不安は渦を巻いて良太を引き込んでいく。
夕方、大阪の工藤から連絡が入ったが、帰れたら最終便、でなければ明日の朝イチで戻る、と事務的に言って切った。
良太は一旦部屋に戻り、ナータンにご飯をあげると、そそくさとコンビニから買ってきた弁当を食べ、パソコンに向かいながら、帰るか帰らないかわからない工藤を待った。
カタカタカタ………
キーボードの音がやけに大きく響く。
さっきからたいして進んではいない。
打ち込むよりもデリートする方が多いのだ。
夜の闇はひとかけの不安を何倍もの大きさに増幅させる。
別に何かあったってわけじゃないさ。
今夜じゃなきゃ明日って言ってたし。
あと一時間もあれば、日付が変わるだろう。
「よし、帰ろ。明日の朝イチだっ」
ファイルを終了させ、良太はパソコンの電源を落とす。
火元をチェックして、灯りを消そうとした時、ドアが開いた。
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