夢ばかりなる34

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 ひんやりとした夜の空気とともに待っていた男の影があった。
「あ………お帰りなさい……」
「急ぎの仕事でもあるのか。適当に切り上げろ」
 心配で、いてもたってもいられないで待っていた心に冷たく響く工藤の言葉。
「なんで言ってくれねんだよっ? 千雪さんには話せても俺には話せねーってのか?」
 カッときた良太は拳を握り締めながら言い放つ。
「あんたが襲われて、怪我したり、命狙われてるの、黙って見てることなんかできるかよ!」
「だったら関わるな」
 あくまでも冷ややかな工藤を、良太はきっと睨みつける。
「あんたが千雪さんのことをめちゃくちゃ大事にしてるなんてわかってる。あの人が京助のことを好きだから、あんたはあの人を見守ってやってる。そうだろ?」
 溢れる涙を乱暴に手で拭う。
「それはいいよ。わかったよ! でも俺は……俺だってあんたのために、何かしたいんだよ。あんたの死に様なんか見たかないんだよ……」
 必死で良太は言い募る。
「なあ、千雪さんの何十分の一でも何百分の一でも、俺のこと好きなら、俺にちょっとだけでも片棒かつがせてくれてもいいじゃん。足手まといになんないようにするからさ」
「良太…いい加減に……」
 怒鳴りつけようとした工藤は、涙に潤んだ良太のまなざしの切なさに、言葉を切った。
「だって、ほら、俺、あんたの部下じゃん? まがりなりにも。なんかわからねーけど、ことがおさまったらさ、もう俺のことなんかすっぱりきっぱり、放り出してくれちゃってかまわないから。だから………」
 涙がまた良太の頬を伝ってぽとりと床に落ちる。

 


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