夢ばかりなる35

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 工藤は苦笑しながら首を振ると、良太の頬に手を伸ばす。
「バカやろう………」
 指で涙を拭い、ゆっくりと口づける。
 優しく、愛しみながら、工藤は良太をしばらく黙って抱きしめていた。
 やがて良太を離すと、「もう、部屋に戻れ」と、工藤は言い、階段を下りて行く。
「待てよ! それだけかよ!」
 良太に背を向けたまま何も答えず、工藤は駐車場へのドアを開けた。
「工藤のバカヤロぉ!」
 しばらく呆然と突っ立っていたが、肩を落とした良太はとぼとぼとオフィスに戻る。
「まさかと思ったぜ。……ったくよ……」
 オフィスのドアが閉まるなり、そんな言葉がホールにこぼれたことに、良太は気づかなかった。
 

 


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