「お前、酔ってるな」
電話の向こうで沢村が苦笑いしている。
「酔ってますよ、いいだろー、いい気分なんだから。そりゃ、俺なんかてんで頼りんなんないしな。ハ……、むしろ、足手まといってことかも」
千雪とのことだって、工藤は何の弁明もしない。
良太が好きだと知っているから、工藤は手を差し伸べてくれるだけだ。
今までに幾度も繰り返した逡巡。
んなこた、わかってるさ!
わかってるけど、ちょっとくらい話してくれたって、バチはあたらねーだろ!!
悔しさと哀しさと切なさが相まって、どうにもいきどころがない気持ちをもてあまし、部屋に帰ってシャワーを浴びると、良太は立て続けにビールをあおった。
もう飲むもんか、と思ったそばから向かい酒だ。
「おいおい、どうしたんだ、良太」
つい、呼び出した相手は沢村だ。
いなければいないでいいや、と思った相手は、どうした、と聞いてくれた。
「俺だって、工藤の足引っ張るようなマネしたかねえし。……じゃあさ、俺、どうすればいい? なあ、俺……、どうすればいんだよ? 教えてくれよ」
酔っているから、そんな言葉さえ簡単にこぼれてしまう。
「俺にそれを聞くか? お前を好きだって言ってる俺に」
おどけたように沢村が切り返す。
「俺の好きは、お前なんかよりずーーっと、真っ直ぐなの!」
声をあげて沢村は笑った。
「わかってるよ、お前、直球勝負なやつだもんな。だから、好きなんだぜ、俺は」
良太はそんな言葉を聞きながら眠ってしまった。
back next top Novels