夢ばかりなる36

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「お前、酔ってるな」
 電話の向こうで沢村が苦笑いしている。
「酔ってますよ、いいだろー、いい気分なんだから。そりゃ、俺なんかてんで頼りんなんないしな。ハ……、むしろ、足手まといってことかも」
 千雪とのことだって、工藤は何の弁明もしない。
 良太が好きだと知っているから、工藤は手を差し伸べてくれるだけだ。
 今までに幾度も繰り返した逡巡。
 んなこた、わかってるさ!
 わかってるけど、ちょっとくらい話してくれたって、バチはあたらねーだろ!!
 悔しさと哀しさと切なさが相まって、どうにもいきどころがない気持ちをもてあまし、部屋に帰ってシャワーを浴びると、良太は立て続けにビールをあおった。
 もう飲むもんか、と思ったそばから向かい酒だ。
「おいおい、どうしたんだ、良太」
 つい、呼び出した相手は沢村だ。
 いなければいないでいいや、と思った相手は、どうした、と聞いてくれた。
「俺だって、工藤の足引っ張るようなマネしたかねえし。……じゃあさ、俺、どうすればいい? なあ、俺……、どうすればいんだよ? 教えてくれよ」
 酔っているから、そんな言葉さえ簡単にこぼれてしまう。
「俺にそれを聞くか? お前を好きだって言ってる俺に」
 おどけたように沢村が切り返す。
「俺の好きは、お前なんかよりずーーっと、真っ直ぐなの!」
 声をあげて沢村は笑った。
「わかってるよ、お前、直球勝負なやつだもんな。だから、好きなんだぜ、俺は」
 良太はそんな言葉を聞きながら眠ってしまった。

 


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