夢ばかりなる39

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 前方を一台の車が走っているのが見えた。
 車がいきなり左車線を走るバイクの前へと動いた。
 それに気づくのが遅かったバイクはハンドルを切り損ねて転倒し、乗っていた二人が中に舞うのがバックミラーに映し出される。
 さらに後を追いかけてきたサンダーバードはバイクの男を撥ねた直後、分離帯に激突した。
 一瞬の出来事だった。
 工藤は急ブレーキをかけると、車を路肩に寄せて停まる。
 後続の車も危うく玉突き事故になる寸前で次々と停まった。
 ところが、バイク転倒に間接的原因となったのではないかと工藤が見た車がすっと隣にきて停まった。
 運転していた男が降り立ち、工藤の車のウインドウを叩く。
「すぐに車を出してください」
「え……」
「早く!」
 若い男はメガネで顔の表情は見えないが、荒療治をするような輩には到底見えない、どこかインテリ然としている。
 だが、おそらくあの男、『T』の部下に違いない。
 工藤は車を発車させる。
 男は車に戻ると、しばらく工藤の車を追いたてるように走り続けたが、目的地に近づいた頃、後ろの車はスピードを上げて追い越し車線へとハンドルを切ったかと思うとかなりのスピードで走り去り、工藤の視界から消えた。
「―――良太……」
 工藤は声に出して呼んだ。
「どんなに今お前がここにいないことを喜んでいるかわかるか?」
 九死に一生を得るようなところに、良太を連れてきてたまるか。
 工藤の想いが果たして良太に届いたかどうか。

 


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