夢ばかりなる4

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  ACT 1
 
 
 平和なはずだった。
 工藤が腕に包帯という姿でオフィスに戻ってきたのは、数日後の夕方のことである。
「工藤さん、どうしたんですか、それ!」
「何でもない」
 驚いて駆け寄る良太に、工藤はにべもなく言い放った。
「何でもないってことはないだろ!」
 良太は納得がいかない。
 鈴木さんも心配そうな顔で工藤を見つめている。
「ぶつけられたんだ。ミラーをやられたんで車は修理に出した。相手に医者に連れて行かれて、大げさに包帯なんか巻かれただけだ」
 それだけ言うと、工藤は社長室に上がってしまった。
 ふいに、良太の脳裏に工藤を殺そうとした男の事件がよみがえる。
 あの時も工藤は良太に何も言ってくれず、勝手に相手を調べた良太が、工藤の代わりに刺されたのだ。
 思い出すだけでも戦慄が走るが、また工藤に何かあったらと思うと気が気ではない。
 最近、工藤へのホットラインにかかってきた電話を何度か取った。
 相手はいずれも同じ人物で、しかも名乗らない。
 何者で、工藤とはどういう関係なのか、工藤は聞いてもごまかすか、知らなくていい、と言い捨てるだけだ。
 良太は不穏な空気をまたしても感じないではいられなかった。

 


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