あくる日、良太は仕事のスケジュールを調整して、レンタカーを借りて工藤をつけていた。
今度はどういう手段で来るか、ということで頭が一杯だった工藤は、よもや良太がそんな真似をするとは思いもよらなかった。
オイル交換だって?
みえみえの嘘つきやがって!
クソッ、絶対、つきとめてやる。
だが――――――
工藤の後をつけていくと、彼がタクシーを停めた先はT大である。
そして、良太にとっても懐かしいカフェテリアで工藤が会ったのは、トレードマークのメガネをかけた小林千雪その人だった。
古い学生時代に来ていたコートを引っ張り出し、スーツの上から羽織っている良太は、学生に混じって座っていても違和感なく見えた。
しばらく工藤と千雪の二人はテーブルを挟んで何やら話し込んでいたが、やがて工藤が立ち上がった。
工藤はどうやら良太は気づかずにその場を去ったようだ。
良太は工藤が立ち去っても、動けずにいた。
なーんだ、俺、バカみてぇ……
工藤が隠していることを探ろうとした結果がこれだった。
こんなとこで工藤は千雪と会っていたのだ。
しかも千雪はあのメガネだ、本当の千雪を知るものはきっとここにはいないだろうから、工藤にとってはめちゃ好都合だし、連中もまさかいつか襲った人間と同一人物とは思ってもいないだろう。
こんなことまでして、千雪に会いたいわけ?
良太は力が抜ける。
それでも―――
工藤を助けたい、良太は思う。
そう、決めたんだ。
ふらりと良太は立ち上がる。
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