夢ばかりなる45

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「俺? いや、あんまし、シャンプーと石鹸の匂いかな? 従姉がくれたやつ、結構いい香りしてたし」
 そんなに誰も彼もがフレグランスをつけているとは限らないのだ。
「思い出した!」
「え、何?」
「いえ、それじゃ、すみません、急に押しかけて。また連絡します」
 急にいそいそとエンジンをかけた良太は、心配そうに見送る千雪がバックミラーに見えたが、とにかく先を急いだ。
 信号で待っている間に連絡を入れると、うまくアポイントが取れた。
「俺だって、工藤を心配させたいわけじゃないさ。―――でも、あいつだけは確かめたい」
 波多野樹。
 広告代理店プラグインの藤堂に紹介された『MEC電機』の広報部長である。
 CF撮影の時何か引っ掛かりがあったのは、波多野からあの時の男と同じフレグランスの香りを感じたせいだったのだ。
 それに、こないだ俺が酔っ払った時、俺を部屋に連れてった時も、そう、あの香りがした。
 指定されたのは、シティホテルの一室だった。
 そこで商談が入っている。
 その前の数分なら会ってもいい、波多野はそう言った。
 危険なことなどない。
 良太は自分に言い聞かせる。
 あいつが何者か、本人に聞き出してやる。
 良太はアクセルを踏んだ。
 

 


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