夢ばかりなる48

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「その……声、思い出した! あんたの声、どっかで聞いたと思った! 工藤に電話してきたやつだ! 貴様、何者だ? 工藤に何をするつもりだ?」
 良太はしっかと波多野を睨みつけた。
「そんなことを聞いてどうする? じゃあ、私が工藤を殺す、といったら?」
 波多野の言葉が良太の心臓を射抜く。
「そんなこと、させるもんか!」
「そんなに工藤が好きなのか?」
 鋭い目線に良太はうっと言葉を詰まらせる。
「こんなところに、一人でのこのこ乗り込んできて、もし私が君を人質にして工藤を陥れようとしていたらどうするつもりだ?」
「そんな…こと……」
 良太は一歩あとずさる。
「こんな後先なしの行動を取るような君を、あの男はいたく大事にしているようだからな。一言そういえば奴はとんできて」
 波多野はにやりと笑い、首をちょんと刎ねる仕草をしてみせた。
「一環の終わりだ」
 伸びてきた男の両手が良太の首を締めつける。
「そんな……こと……させるもんか!」
「君がいくらそうやってがんばったところで、君の力ではどうにもならない。私一人倒せない」
 淡々と不適なことを並べ立てる。
 だが、それはいちいちもっともな話だ。
 苦しくて男の手に爪を立てながら、良太は改めて自分の無力さを思い知る。
「バカじゃなければわかるだろう? 君は工藤の抱えている爆弾に等しい。以後、こういう考えなしのマネは控えることだな」
 いきなり、男は良太を突き飛ばした。
 咳き込みながら、良太は絨毯の上から立ち上がる。
 ぐうの音も出ないとはこのことだ。

 


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