「あら、あたしも混ぜてよ!」
「それはもう」
かおりの発言に沢村はにっこり笑顔を返す。
これが滅多に見られない世の女性たちを片っ端から落とすといわれている必殺の笑顔なのだが。
「あたしはプレーはしないけどスタッフ、やっぱマネージャー志願!」
はい、とかおりが手を挙げる。
「かおりちゃんなら、もう、何やっても許されるから、OK、OK!」
「俺だって、まだ野球はやりたいさ」
肇もポツリと口にする。
「決まりだ。じゃあ、良太とかおりちゃんと飯島、三人セットなら早速明日から立ち上げだ!」
悦に入って雄たけびを上げる沢村に、待てよ、と良太が口を挟む。
「三人セットなら、って何だよ?」
「そんなもん決まってるだろ? お前が入らなけりゃ話は始まらないってこと。お前のために作るチームなんだからな」
言うなり沢村は良太の肩を引き寄せる。
「な…に言ってんだよ!」
へ……と再度固まる肇の横で、「やっぱりそおなんだ?」とすっかり出来上がったかおりがけらけら笑っている。
「お前、いくらなんでも冗談でそんなこと………」
その時、良太の上着のポケットで携帯が鳴った。
ベートーベンの運命、すなわちボスからだ。
「わりぃ、ちょっと……」
これ幸いと良太は携帯をタップした。
「はい、明日、十一時ですね、はい、わかりました」
翌日羽田まで来てくれという札幌にいる工藤のお達しである。
久々のお迎え命令だ。
「フン、中年のオッサンより俺のがずっといいのにな」
ぼそっと沢村が囁いた。
途端じわじわ顔を熱くした良太は、「うるさいな」と沢村の腕を小突く。
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