ACT 1
面接はこれが始めてではない。
だがこんなに緊張したことはこの世に生を受けて二十二年と半年ほど、身に覚えがなかった。
髪はサラサラ、細面の顔はまあまあ、いつもはヘラヘラしてても、姿勢を正せばきりりと目元涼やか。
痩身だが一七八はある身長。
これでもT大野球部のエースだったのだ。
T大、というところがミソではあるが。
現在猫のナータンと二人? 暮らし。
自分ではそこそこイケてる男、くらいは思っている広瀬良太である。
青山プロダクション。
目指す会社は乃木坂にあった。
洒落た七階建てのビルのエントランスに入り、受付の電話でやや緊張気味に担当の鈴木さんを呼び出した。
やがて優しそうな五十がらみの女性が現れ、二階の応接室に通してくれる。
既にリクルートスーツに身を包んだ四人の男子学生がいて、ひょっこり顔を出した良太にきつい視線を投げかけた。
見るからにできそうなメンツに、良太はこれはここもダメかと一瞬たじろいだものの、もはやダメ元というやつだと腹をくくった。
ここまではよかったのだ。
そこへ颯爽と現れた、さほど若くはないだろうが、俳優かモデルばりの日本人離れした端正なマスク、大柄のがっしりとした体躯を持つ男。
ダンヒルの渋いスーツを着こなし、一見ハリウッドの俳優かと思われるようなナイスガイだ。
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