お前の夢で眠ろうか 15

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 オフィスの奥にある工藤のデスクには工藤専用回線の電話もあり、たまにかかると良太がそれに応対する。
 プライベートなら携帯の方が余程便利だと思うのだが、今どきアナログな固定電話だ。
 数時間消える、と行き先も告げずに出かけていく相手がいるということにも、最近気づいた。
 もちろん目的がラブアフェアとは限らないが。
「工藤の相手って、だれなんすかね」
「まあ、腐るほどいるんじゃない?  田所代議士夫人なんてのも、工藤さんに首ったけで追い回してる中の一人だな」
 ポツリと口にした良太の言葉を聞きつけて、たまたまオフィスにいたアスカのマネージャー秋山が後ろで呟いた。
「うそ!?」
 田所といえば保守派の有名代議士だ。
「工藤さん、何せもてるからな。女にも男にも」
 秋山はくすりと笑う。
「男もっていうと…」
 先日の美人がふっと頭に浮かぶ。
 確かに男でもあんな美人ならこの業界、わからないでもない。
 あれから、工藤にあの美人のことを聞いてみたが、「気にしなくていい」と一言で返された。
「そう珍しくもないだろ? あんなカッコイイ男に抱かれたいって思う奴がいたって」
「だ、抱か……抱か……!」
 男にべたつかれてゲゲェな思いをした良太にしてみれば、ありえねぇ、ところだが。
「そういえば小林って人から連絡入った時だけは、工藤さんも仕事にさっさときりつけて出てきますよね」
 そうだ、どっかで聞いたと思ったら関西なまり!  ひょっとしてあの美人が小林?
「ああ、小林先生ね…T大の先生だろ、お前の方が知ってるんじゃないのか? ミステリー作家の小林千雪」
「小林千雪ぃ!?」
 意外すぎる答えに良太は思わず仰け反った。
 小林千雪といえば工藤がプロデュースしてヒットした映画の原作者だ。
 既にシリーズ三作目を予定している。
 青山プロダクションの志村嘉人が準主役となる設定で一作目から出演し、毎回ヒロインかゲストに起用された女優は売れっ子になる、といういわくつきの映画だ。

 


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