お陰でそのシリーズの映画化の噂が流れる頃には、新人タレントを抱える各事務所などから出演希望者が殺到する。
秋山の言うように、小林は作家である前にT大法学部助教で、講義も持っていた。
一応法学部を卒業した良太もその講義をとったことがあるのだ。
「ダサいメガネかけて、いつもぱっとしない感じのオッサンだったけど、本は面白いですね。工藤さんが目をつけたくらいだから、映画もヒットしてるし」
「ぱっとしないオヤジ、ね。まあ…そうだな」
何か含みのある言い方だな、と良太は思ったが、それだけで秋山は口を閉ざしてしまった。
何だ、あの美人とは別人か。
何だか無性に気になるのだが、あの美人のことを聞いた時の工藤の態度といい、ひょっとして秘密にしているのかも、と良太は思う。
大事なことなら、携帯でやり取りするよな。
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