ここって外資系だっけ? なんてくだらない科白を良太が心の中で呟いて数秒。
座りごこちのよさそうな椅子に深々と腰を下ろし、長い足を組んだその男は、面接に訪れた五人の学生達が窮屈そうにソファに座っているのをジロリと一瞥したかと思うと、どすのきいた低い声でこうのたまった。
「社長の工藤だ。最初に言っておくが、俺の伯父は広域暴力団中山組組長だ。それを踏まえた上でこの仕事をやる気のあるやつだけ残れ。その気のない者はとっとと帰れ」
ぶったまげた。
十二分にびびって動揺したみんなは席を立ってドアへと向う。
つられるように腰を浮かしかけた良太だが、この際仕事を選んでいられない理由が彼にはあった。
工藤は目を眇め、ソファに座り直した良太を見やる。
「お前はやる気があるのか?」
「も、もちろんです。こう見えても野球部のエースだったんです」
膝の上で両手の拳を揃え、必死に言葉を絞り出した。
「ほう?」
工藤は冷笑を浮かべ、からかうような視線を向ける。
「よし、お前の肩書きは俺の秘書だ。今は身体がいくつあっても足りないところだ。早速仕事に入ってもらうからついてこい」
あれよあれよという間に入社することになり、良太は右も左もわからない業界に足を踏み入れていた。
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