お前の夢で眠ろうか 20

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 奈々の家に日参し始めてもう十日目。
 まだ話も聞いてもらえない上に、奈々は家に軟禁状態だ。
 本来ならプロダクションの社長が出向くのが当然かもしれないが、如何せん目つきだけでも只者じゃない工藤なんかが顔を出そうものならうまくいくものも一気にぽしゃるのは目に見えていた。
 その間にも、映画のスポンサーである製酒メーカーの清涼飲料水のCMを始めとして、彼女を準ヒロイン役に設定した形でプロジェクトは動き始めているのだ。
 SNSやインターネットでも未来のヒロイン登場を期待させるようなコピーで視聴者を煽っている。
 加えて奈々のマネージャーの方も、案の定工藤と面接しただけでみんな逃げ出してしまって決まらない。
「何日同じことやってりゃ気が済むんだ? お前の頭にはヌカミソでも詰まってるのか? え?」
 吠えるような怒鳴り声が、良太の頭にがんがん響く。
「ちったぁ、脳サイボウ動かして、とっとと片づけろ!」
「はあ…」
 ちぇ、インゴーオヤジ! 
 頭を下げてデスクに背を向けながら、ボソッと小声で毒づく。
「何か言ったか?」
「へ、いえ別に」
 慌てて首を竦める。
「仕方ない、車は高輪に置いてるやつを使え。ただし」
 げ……、あのでかいベンツに乗れっての? しかも左ハンドルじゃん。
 あのジャガーはけっこうお気に入りだったのに。
 二台ある社用車はタレント二人のマネージャーが使っている。
「リミットは夕方五時だ。夕食会までには奈々の父親の了解を必ずもらってこい」
 明日って、工藤、スポンサーのお偉いさんと夕食会だったっけ…。
 う~、くらくらする…腹、減りすぎて…。
「はあ…」
 やっとメシにありつけるか……一週間連続永滝園シリーズかぁ…。あ…ナータン…うまそ…。
「………時に、赤坂の……だ。おい、良太?」
 世界が真っ白になったと思うと、次には身体がふっと暗闇の底に落ちていくような気がした。
 

 


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