お前の夢で眠ろうか 25

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 車は都心を離れ、青梅街道を抜けるとやがて関越自動車道に入った。
 何処へ行くのか、とも聞けないまま、良太は窓の外に目を向ける。
 ラジオから流れてくるのはアメリカ人DJの機関銃のような喋りだ。
 アメリカンポップスがそれに続く。
「何処行くんですか。明日、南沢さんのとこ、行かなくてよかったんですか」
 静寂に耐えかねてイライラしながら良太が口を切った。
「来週でいい」
 不機嫌そうな答えが会話を絶った。
 妙なタイミングでラジオのプレスリーが『ラブ・ミー・テンダー』を歌い始めた。
 歌声だけが流れる中、白々とした雰囲気のまま、車は滑るように夜の中を走り続ける。
「降りろ」
 揺り動かされて良太ははっと目を開けた。
 いつの間にか眠っていたようだ。
「どこだよ、ここ…」
 車を降りると、東京からかなり離れた証拠にかなり肌寒い。
 目の前に建つ屋敷には見覚えがあった。
 接待のお供や、夏には会社のタレントやスタッフみんなで訪れたこともあったのだが、鬱蒼とした森の中に、灯りをともした屋敷はいつもと違うもの恐ろしげな顔を見せている。
「ちょっと社長、何で、こんなとこ…」
 工藤は何も言わず、良太を乱暴な仕草で屋敷の中に促した。
 背中に倶利伽羅紋紋を掘り込んでいるという矍鑠たる老怪が玄関に出迎え、黙って二人を中に入れた。
 玄関ホールの壁に掛かっているゴブラン織りのタペストリに描かれた戦場の馬の目が薄暗い灯りに光っている。
 続くリビングのテーブルには、灰緑の骨董品らしき壷に紫の菖蒲が豪快に生けられていた。

 


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