お前の夢で眠ろうか 34

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 帰りの良太は全く木偶の坊になっていた。
 夕方に軽井沢を出たのだが、しばらくして、小綺麗なレストランで車は停まった。
 トスカナ地方の料理がメニューに並ぶ。
 工藤はコースを選び、ワインが運ばれ、前菜が出てきた。
「ここは結構うまいんだ。がっつり食え」
 えらく陽気な工藤に、ぶーたれた顔を隠しもせず、良太はもぞもぞと前菜を口にする。
 結局、恥ずかしいからと訴える必至の抗議も空しく、シャワーから何から、まるで園児を扱うような工藤のこずるいやり方でまるめこまれてしまった。
 俺だって大人の男なんだ! という良太の主張はあっさりと躱されたわけだ。
 そのうち、トスカナ特産のトマトをあしらったサラダや日本人好みにややあっさりめにアレンジされたソースのパスタ、メインの仔牛のローストと、次から次へと運ばれてくる料理に、しばらく良太は夢中になって舌鼓を打つ。
 比較的飲みやすい赤ワインもトスカナ地方のものだ。
 酔いの心地良さにすっかり緊張が溶けてしまった。
 まだ運転しなければならない工藤は水を口にしただけで、良太にあれこれ世話を焼いてくれる。
 ミルクのパパレーゼまで平らげ、腹がいっぱいになると、工藤に対する怒りもどこへやら。
 会社に着くまで良太は爆睡した。

 


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