お前の夢で眠ろうか 40

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 赤坂にあるレストランバーは深夜に入っても尚、賑わいを見せていた。
「あら、良太じゃない、工藤さん待ってるの?」
 カウンターの隅でコーヒーをすすっていると、アスカが良太を認めて近づいてきた。
「うん、時間潰し。早くてあと一時間だな……撮影終ったの?」
「ううん、まだ。ちょこっと休憩」
 後ろのテーブルでは、よう、と、秋山が良太に声をかけ、タブレットを開いた。
 良太の横にアスカが座ると、続いてわらわらと同じドラマに出演中の若手女優がスツールに陣取った。
 以前アスカに連れられてきたことのあるこの店は業界人御用達らしい。
「……工藤さんってぇ、大人の男って感じでカッコイイよねぇ。さっきこそっと撮っちゃった」
 若手女優の一人がフフッと笑い、自分の携帯をアスカに見せる。
「あんなおっさんのどこが。横暴なだけじゃない、工藤なんて」
 工藤という名前に、良太の胸は思い切り反応し、アスカたちをこっそり窺う。
「ちょっと強引そうなのがいいんじゃん。アスカは傍にいすぎるからわかんないのよ。工藤さんにとりいろうって女多いよ。ちょっと自分に自身がある女だったら」
「工藤さんて、据膳平らげてそれきりって噂だけどぉ、何かぁ、工藤さんを知るとやみつきになるんだって。わかるな、あたし。もうどうにでもしてって感じ!」
「やっだぁ、麻矢ってば」
 麻矢と呼ばれた豊満な肉体が売りの女優の台詞に、良太は顔を赤くして噎せ返る。
「良太、大丈夫?」
 とても聞いていられず、慌ててスツールを降りた良太は、アスカたちに挨拶もそこそこに店を出る。
「バッカみてぇ、俺…女じゃあるまいし」
 同時に、据膳平らげてもそれきり、という麻矢の言葉が、何だか胸に痛い良太だった。
 
 

 


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