お前の夢で眠ろうか 42

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「腕!? 腕、やられたんですか!? すぐ救急車!」
 廊下を振り返っても、既に何の姿もない。
「バァカ、ただの打撲だ…」
 ようやく立ち上がり、社長室に入っていく工藤の後から、良太も続く。
 痛みを堪えながら、工藤は上着を脱ぎ、シャツも脱ぐ。
 二の腕が赤く腫れ上がっている。
「良太、ハップでも持ってきてくれ」
「ダメです! 病院、行って下さい! 骨とか折れてるかも知れないじゃないですか!」
 工藤は顔を顰めながら笑みを浮かべる。
「こう見えても合気道の段持ちだ。この程度の怪我は慣れてる」
「でも…!」
「野郎、バットか何かでぶっ叩きやがった。あいにく、咄嗟に避けたんで、頭は割られずに済んだがな」
 納得しかねる顔で救急箱をとりに向おうとした良太を工藤が呼び止めた。
「このことは他言無用だ。騒ぎを大きくするだけだ」
 仕方なくこっそり二階から救急箱を取ってきて、良太は工藤の鍛えられた腕に湿布薬を張った。
「相手の顔、見たんですか?」
「いや、キャップとサングラスしてやがって」
 工藤の手当が終わると、良太は非常口を中心にビルの周りを粗方探したが、バットらしきものは見つからなかった。
 警備員に尋ねても、怪しい人影は見なかったという。
「やっぱ警察に届けた方がいいですよ! さっきの、警備員室に俺宛ての電話なんて、変だと思ったんだ! きっと犯人が…」
 何ごともなかったようにノートパソコンに向う工藤に、良太は懸命に説得を試みる。
「相手もわかってないんだ、組関係かと言わんばかりだぞ、警察なんか」
「じゃ、ボディガードつけて下さい!」
 断固として聞き入れない工藤に良太は必死に言い募る。

 


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