お前の夢で眠ろうか 44

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「嘘クサい演技が板についてる女どもにみせてやりたいもんだな…」
 脱力して椅子の背に凭れ掛かった工藤は呟いた。
 泣きながら飛び出していった良太に何の損得勘定がないことがわかるだけに、ひどく可愛い。
 好きな人の死に顔なんか見たかねぇ…よ…
「好き」なんて言葉にいまさらこんなに動揺するとは思わなかった。
「おい、まさか…マジじゃないだろ…?」
 ずっと昔に置き去りにしたはずの甘やかな胸の痛みを覚え、工藤は頭を掻きまわす。
「フン…鬼の霍乱…か?」
 だが、ひょっとして良太は勘違いしてるのかもしれない。
 ガキだからな。
 そう思い込んでいるだけで。
 家族のために健気に身体を張っているあいつを、つい見ていられずに、元々俺が仕掛けたことだ。
 選挙カーの中に桜木の名前を見た時、またあのことが蘇り、腹の底からドロドロしたもので溢れそうになった。
 しかも酔って、良太に苛つきをぶつけるなんざ、愚の骨頂もいいとこだ。
 どうしたもんかな…
 いや、あんな健気で可愛いやつを、勘違いで縛りつけていいわけがない。

 


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