お前の夢で眠ろうか 47

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 その口から関西弁が飛び出すのが不思議だと思えるほどに日本人とはまた違う人種のような気もする。
「あの時、助けてもらったのに、俺、お礼もできなくて、あの…ありがとうございました」
 慌てて携えたビールのグラスを渡しながら、少々気後れしながらも良太は頭を下げた。
 目線がほとんど変わらない。
 モデル体型の華奢な身体の上に小作りな顔が乗っかっている。
「ああ、助けたいうほどのことはしてへんけど、覚えててくれたん?」
 花のような笑顔とはこのことだろう。
 その笑顔の主に口を開きかけた工藤は、その時何かを踏みつけた。
「何だ、定期入れ? 野茂? 良太だな。ほんとガキだな、あいつは」
 落ちていたのはビニール製の定期入れだ。
 MLBで活躍していた野茂英雄を刷り込んだもののようだ。
 工藤は定期入れを手に苦笑する。
 中の写真が少し見えていた。
 工藤はそれを開いてしばし見ていたが、やがてぱたんと閉じると、上着のポケットに仕舞い、フンと鼻で笑って代わりに取り出した煙草をくわえた。
「なるほどな……。まあ、あたりまえか」
 ぼそりと低い声で口にすると、ふうっと煙を吐き出した。
「広瀬良太」
 工藤が良太をその美人に紹介した。
「去年入ったウチの唯一の新人。お前の後輩だ」
「後輩ですか? 俺、この人の?」
 きょとんと、良太は工藤と美人を交互に見る。
「うちの野球部エースを知らなくてはモグリやからな。よろしく小林です」
「こ、光栄です。先輩ってホントに? でも俺、一浪してるから、二十五になりますよ」
「俺の講義取ってくれてたんですよね?」
 良太はマジマジと小林を見つめる。

 


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