お前の夢で眠ろうか 51

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 午前零時をまわった頃、タクシーで会社に戻ってきた工藤は、オフィスの灯りがついているので、良太がまだ仕事をしているのだろうかとドアを開けた。
 その良太は床に座り込んで俊一とケラケラ笑っている。
「お前ら、そこで何やってる」
 二人は振り向いて、工藤の姿を認めた。
「あ、シャチョー、おっかえんなさーい! シャチョーも一緒にどーっすか?」
 すっかり酔っ払っている良太は、ビールの缶を高々とあげる。
「酒がいい機嫌で飲めるんだ、とっくに仕事は済んだんだろうな?」
「まーまー、シャチョー、かてーこと言わずに、どーぞおひとつ!」
 険しい目を向けながら近づいてきた工藤にもおかまいなく良太はその袖を引っ張り、ビールの缶を押しつける。
「お前か? こいつに飲ませたのは」
 工藤はとりあえずビールのプルトップを引くと、煙草を銜えている俊一をじろりと睨む。
「いやあ、実は俺がコイツの楽しみにしていた冷えたカツ丼を食っちまって、まあ食い物の恨みは何とかっていうし…」
 俊一はちょっと肩を竦めてみせる。
「シャッチョー、スルメもありまっせ?」
 ヨタヨタとスルメを差し出しながら、足がもつれた良太を、工藤が抱き留める。
「おんや、シャッチョーってば、スルメなんかで女の余韻を邪魔すんなってとこ?」
 自棄になってがぶ飲みしたので、自制心もかなり飛んでしまっている良太は、工藤の上着に鼻を摺り付けてクンクン匂いを嗅ぐ。
 工藤は鼻で笑うと、猫の子でも掴むように良太の後ろ首を掴んで上着から引き剥がした。
「すっかりできあがってるな。俊一、コイツを部屋に連れてって寝かしてやれ」
「ヘイヘイ、人づかいの荒いオッサンだぜ」
 良太を部屋に連れていった俊一がオフィスに戻ってくると、良太のノートの前で、工藤がキーボードを叩いていた。
「まだ、やるんすか?」
「メール流すだけだ」
 画面にはフランス語で書かれたメールがあった。

 


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