お前の夢で眠ろうか 52

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 二週間後にはパリで行われる世界的デザイナー、アルトゥール・マルロー個人のパリコレクションに、アスカも出演することになっている。
 このメールを今日中に先方に送るようにと良太に言っておいたのだが、意地でも仕事はやり遂げる良太が珍しくあのテイタラクだ。
 あと数行キーを叩けば、工藤のサインを入れて書類は完成、というところまではいっているようだ。
 女の余韻がどうたら、と工藤に鼻を擦り寄せてきた良太は、まるで女に嫉妬しているようにみえた。
 俺もヤキがまわったな。
 あんなガキ相手にそんな腐ったことを考えるなんて。
 工藤は画面を見ながら苦笑する。
「気持ちワリィな、思い出し笑いかよ」
 俊一の声に工藤は我に返った。
「これ、アスカの写真集用の国内で撮ったやつ」
 良太のデスクにどさっと大きな封筒を置くと、俊一は缶ビール片手に、傍の良太のデスクに腰をかける。
「けどよ、良太の奴、ちょっと働かせすぎじゃねーの?」
「アスカが無事ショーを終らせてくれればな」
「ってなぁ……そういや工藤さんよ、良太のやつ、いっちょまえに、女、できたんじゃねー?」
 工藤の手がとまる。
「女?」
「俺のカンは滅多にはずれねーんだ。あいつ、最近何かありそーってゆーか、あんた、知らねーの?」
「残念ながらな……」
 俊一のカメラマンとしての目は信用している。
 やっぱりあの時の良太の台詞をマジに受け取ることはなかったわけだ。
 いつのまに知り合ったのか。
 女…、ね。
 多分定期入れの……。
「じゃあ、写真集に使うやつ、選んどいて」
 空き缶をクズ入れに放り、オフィスを出ていく俊一を横目に見つつ、バン、とついキイを押すのに力が入ってしまう。
 いい年をして浮かれるのはもうこの辺でやめておけということだ。
 工藤は送信完了を確認してノートの電源を落とした。

 


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