お前の夢で眠ろうか 53

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「あっれー、朝だ」
 良太は自分の部屋のパイプベッドに寝ているが、シャツを着たままだ。
 上着やズボンは座椅子に引っかけられている。
 がば、とベッドの上に跳ね起きる。
 つられて足元で丸くなっているナータンも驚いて飛び降りた。
「やっべー、仕事!」
 まだ目覚ましは七時を指しているが、昨夜の仕事を片づけていないことをはたと思い出し、慌てて服を着て、鍵もかけずに部屋を飛び出した。
 こんな時、会社のあるビルに住まいがあるのは非常に助かる。
 暗証番号でドアを開けると、オフィスは当然まだ暗い。
「あれ、メール送信済み?」
 ノートを立ち上げ、メールを開いた。
「げ、送信されてるってことは、社長が……? やっべー!」
 工藤の雷を覚悟する一方、メールが送られていたことにほっとした良太は、画面を閉じると、工藤専用回線の留守電をチェックしてみる。
『今度は失敗しないぞ』
 くぐもった男の声でメッセージが一件入っていた。
 脅しの電話は大抵夜にかかってくる。
 向こうの電話番号は表示されない。
 差出人のない手紙は、オーソドックスな新聞の切り張りだ。
『死刑執行まで首を洗って待っていろ』だの、『お前のおかした罪を俺は許さない』だの、始めは芝居がかったやつと思っていたが、実際工藤は襲われたのだ。
 次は本当に命を狙ってくるかもしれない。
「人がこんなに頭使って心配してんのに、あのオヤジときたひには、無頓着過ぎるぜ」
 心の奥にはまだじくじくとした痛みが燻っている。
 もう俺に残された道は、ナイトに徹するしかないな…。

 


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