お前の夢で眠ろうか 57

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 ジャックとグラスを合わせると、良太は先ほどの小林と俊一の会話を思い出して、知らず知らず飲み干していた。
 フン、小林先生もそんならそれでとっとと工藤とくっついちまえばいいじゃんかよ!
 小林も工藤を振り回しているつもりはないといっていた。
 つまり期待に応える気になったということだろう。
 ジャックは何か早口に捲くし立てているが、工藤と小林の仲睦まじそうなようすが頭から離れなくて、良太の耳にはてんで入っていない。
 ワインは美味しいし、チーズやハムも上等だし、調子にのって飲んでしまった。
 酔いが回ってついうとうとしかけた時、ふいに酒臭い息を吹きかけられ、ソファの上で目の前にいきなりジャックのドアップが迫ってくるのに良太は目を剥いた。
 良太は慌てて離れようとするが、しっかりその腕の中にすっぽり抱き込まれてしまっている。
「ゲッ、やめろ! わああ…!!」
 唇が触れる寸前で良太はその腕を逃れ、ドアに走るが、ジャックは足元もおぼつかない良太にすぐに追いついた。
 こういうことだったのか、とやっとわかった時には、ドアに押しつけられて荒い息とともにキスを振りまかれる。
 身体中に怖気が走る。
「ぎゃあ…誰か…助け…工藤さ…………!!」
 どんどん、と外からドアが叩かれた。
「良太!」
 背中のドア越しに工藤の声が聞こえる。
「…工藤…さん!!」
 良太は死にもの狂いでジャックを振り切り、ドアのロックを外した。
 ドアが開くと、工藤と小林、それに俊一や秋山が駆け込んできた。
 工藤は良太に抱きついている男を力任せに引き剥がした。
 凄みのある声で丁重にジャックに文句を言うと、肩を竦めてにやける男を残し、工藤はみんなを引き連れて部屋を出た。
「何であんな男についていったんだ!」
 エレベーターのドアが閉まるなり工藤は良太を怒鳴りつけた。

 


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