お前の夢で眠ろうか 60

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「ここだけの話……平造さんに聞いたことがあるんだ。工藤さん、昔、熱愛した人と引き裂かれて、その人自殺したらしい」
 帰りの飛行機の中で、隣に座った秋山は唐突にそんな話を始めた。
「その人の名前がちゆきというそうだ」
「え? ちゆき…?」
 良太は思わず聞き返した。
「そ、桜木ちゆき。偶然にも小林先生と同じ。字は違うかもしれないけど。君には言っといた方がいいと思ってね」
「え……なんで……」
 秋山はひょっとして自分の工藤に対する気持ちに気づいているのだろうか。
 ホテルであんな大泣きしてしまったし。
 いつも冷静で仕事をきっちりこなし、何を考えているかわからない秋山だが、時々周りに見せる気遣いから、良太には信頼できる人だという認識があった。
 でも例え亡くなった恋人と小林の名前が同じだとしても、工藤が小林千雪を愛しているのならそんなの関係ないじゃないか。
 小林に声をかけた工藤の後ろ姿が、良太の脳裏によみがえった。
 チユキ、と呼んでいた。
 親しさを見せつけるみたいに。
 あれからきっと工藤は小林と一緒に過ごしたんだろう。
 どうせ俺なんか初めっから問題じゃなかったんだ。

 

 


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