お前の夢で眠ろうか 62

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     ACT 4
 
 
 映画がクランクインすると、奈々は新人にしてはなかなかいい演技を披露し、評判も上々だ。
 冬の気配を感じるようになった十一月のある日、良太はまた田所夫人からの電話を取って、工藤に回した。
 ちょうど映画のロケから帰ってきていた奈々を谷川が家に送ると言って出て行った。
 そのことが、後で事態を思いもよらぬ方向へ導くことになった。
 工藤を脅している犯人はバット事件からまだ何も仕掛けてはこない。
 工藤には内緒で、少しでも犯人の手懸かりがないかと、良太は暇さえあれば工藤の過去を聞いて回ることに専念している。
 業界のことが知りたいから、と、下柳にも一緒に飲む機会を作ってもらった。
「工藤はキレモノだったからな。やることなすことアタリッぱなしってゆーか。やつに関わったタレント、みんな売れっ子になってるくらい」
「だからよけい、その影で泣いた人から逆恨みとかやっかみとかされてたんじゃないんですか? 今でも」
 酒好きな下柳のグラスに、ご要望のヘネシーをとくとくと注ぐ。
「まあな、正直、やつを面白くないと思っている連中はいたさ。売れたいがために近づく女優とかもいろいろいたが、切り捨てるとなったら、シビアだからな、あの男は」
 その科白は良太にはずしんと応えるが、今はそんなことにかまってはいられない。
「そう言えば以前、村田ゆかりって人のこと、言ってましたよね? 可哀相にって」
 良太は思い切って聞いてみる。
「いや、べつに工藤のせいじゃないんだが」
 何だ、と肩を落とす良太に、下柳は気になる話をした。

 


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