お前の夢で眠ろうか 63

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「工藤に目を掛けられたのをいいことに、どうやら事務所側が彼女に遊び慣れている風を装わせたらしくて工藤もうっかり手を出したところが、ゆかりの方が工藤自身にも夢中になったんだな。あげくは工藤が別の女優とホテルから出てきたところを待ちぶせして、お粗末なスキャンダルさ。せっかく手に入れた主役の座をそれで降ろされてさ」
琥珀色のグラスの向こうに、良太は工藤に夢中になったというその女優と自分が重なってみえた。
「結局、名前もマスコミから消えちまって、何でも自殺したんだと」
それだ!
良太は心の中で叫んだ。
その村田ゆかりの家族か誰かが、あの脅迫状の犯人ではないか。
村田ゆかりの家族や郷里については、下柳も何も知らないらしい。
「工藤の過去なんか調べてどうするの?」
帰り際下柳に尋ねられたけれど、工藤に誰にも話すな、と釘を刺されている以上、適当にごまかした。
村田ゆかりという女性をどうやって調べるか思案しながら、ひとりオフィスで残業していた良太は、ドアが開いたのに気づいて振り返った。
「谷川さん、お疲れ様」
「まだ仕事か?」
無精ひげの表情が少しやさぐれて見えた。
「ええ。今夜はスポンサーと飲み会なんで、きっと迎えにこいって呼び出されるから」
「へえ…スポンサー、ね。ラメ入りの爪を持ったスポンサーかな?」
「え?」
怪訝な視線を向ける良太に、谷川は続ける。
「田所代議士夫人とはな。とんだスキャンダルだ。こないだ、奈々を送ってここに戻ってきたら、ちょうど工藤が出かけるところだった。昔の仕事の癖で、つい、ひょっとして組の連中か誰かと会うんじゃないかと、跡をつけてみたのさ」
「社長は組とは関係ない!」
思わず良太は叫んだ。


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