お前の夢で眠ろうか 65

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 ドアで強か腕をぶつけたが、良太はすぐに起き上がり、今度は谷川の足にタックルする。
 不意をつかれて、廊下に転んだ谷川は、態勢を整えて良太を殴りつける。
 良太が壁にふっとんだ、その時、運よくエレベーターから秋山が降り立った。
「何をしてるんだ!」
「そいつ、捕まえて下さい! 社長襲った犯人なんだ!」
 よろよろと谷川に追いすがる良太と、「警備員を呼ぼうか?」と言う秋山に挟まれて、谷川はため息と共に肩を落とした。
「ヤクザは大嫌いなんだ、昔っから。あの野郎、刑事の妹を無理やりかっさらいやがって、俺の人生を台無しにしやがった!」
 谷川が工藤と田所夫人のことを週刊誌に売ろうとしているのだ、と良太が勢い込んで秋山に説明すると、谷川の話は妹の相手に対する憤りへとすりかわった。
「工藤なんか、暴力団の旨い汁を吸ってこんなビル建てやがったくせに、代議士の妻と不倫だと、笑わせるな!」
「工藤さんは組とは関係ないって言ってるだろ!」
 突っかかる良太を制して、秋山がその後を引き取った。
「元刑事なら調べればわかると思うが、あいにくこのビルは正当に工藤さんの財産だ。彼の母親が亡くなったために、工藤さんは彼の曾祖父から横浜の家屋敷を直接相続した。それを売ってこのビルを建てた。ついでに言わせてもらえば…」
 秋山は冷たい口調で続ける。
「俺は刑事ってのが大嫌いでね。前にいた商社で前途洋々だった俺が、刑事にいきなり身に覚えのない容疑を着せられてさ、フィアンセにも知れて婚約もおじゃん。真犯人が出てきたって後の祭りだった。無能な刑事は、俺を罪人呼ばわりして、俺の人生を台無しにしやがったと、そういうわけだ」
 そんなことがあったのか。
 どおりで男前でいかにもエリートな秋山さんがウチなんかにいるわけだ。
 良太は秋山を見ながらうなずいた。
「ところで、社長を襲ったって、どういうことだ?」
 矛先は今度は良太に向いた。


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