お前の夢で眠ろうか 70

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『カクゴハイイカ』
 数日後、仕事が終わった良太は、何気なく工藤のプライベートラインの留守電をチェックして、ギクリとする。
 握り締めた掌が汗ばんだ。
 今までになく切羽詰った感じだ。
 今度こそやる気だ、どうしよう。
「来週のクリスマスは、我が社は一斉に休みだ。生死に関わる仕事でも入らない限り、イブはみんな堂々と恋人といちゃついていいぞ。どうだ、粋なクリスマスプレゼントだろ?」
 翌日になると、気をもむ良太の心配も知らぬげに、鈴木さんと良太、それに北海道ロケに向う前にオフィスにたまたま立ち寄った谷川と奈々を前に、工藤は宣言した。
 一体全体何の冗談だ? 
 良太は唖然とする。
「お前をこき使い過ぎだとみんなに忠告されている。お前もイブくらい彼女と過ごしたいだろう? 良太」
 どこにいるよ、そんなもの! チクショー、自分が小林といちゃいちゃしたいからって!
「俺はこれから出かけて、帰りは夜中になる。ああ、良太、今日は送らなくていい。高輪の車を使う」
「あ…工藤さん!」
 急かせかと出かけようとする工藤に良太は呼びかけた。
「何だ?」
「気をつけて…くれぐれも。脅迫状のやつ、また襲ってくるか知れないし」
 良太はすがるような思いで告げる。
「余計なことは考えるなと言った筈だ」
 工藤は冷たく言い放つと、さっさと良太に背を向けて出て行った。
 良太はドアを見つめてしばらくひとり突っ立っていた。
 心配させてもくれないんだ。
 イブはやっぱり小林と一緒なのかな、工藤…。
「けど…しょうがないじゃん……」
 工藤が小林を愛しているのなら。
「俺って、健気……」

 


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