お前の夢で眠ろうか 74

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「どうかしたんですか?」
 バーのカウンターに並んで座っていた広告代理店の営業課長が、そわそわと何度も携帯をかけ直す工藤に訊ねた。
「いや…」
 この時間ならもうオフィスにいるはずだが、部屋にもいないし、弁当でも買いに行ったとしても、一時間もかからないだろう。
 何となく今日の良太は妙だった。
 下柳の話じゃ、ここのところ何やらコソコソ調べたりしていたらしいし。
 狙われているのは俺だが、とばっちりを受けないとも限らないんだ。
 あのバカが先輩や後輩を言い訳にする時はどうも胡散臭い。
 何か胸騒ぎがする。
「悪い、ちょっと急用を思い出した。今夜はこれで」
「はあ、それじゃ、何分よろしく…」
 営業課長の声に碌に挨拶もせず工藤は店を飛び出した。
 タクシーを飛ばして、会社に乗り付けると、工藤は眉を顰める。
 何かおかしい。
 警備員室を見るともぬけの殻だ。
 工藤はエレベーターをいらいらと待つ間も、良太の携帯を慣らしてみるが、コール音が響くばかりだ。
 その時、声が聞こえた。
 男の叫び声だ。
 上の方から聞こえた気がする。
 七階でエレベーターを降りると、工藤は非常口へ走り、屋上へのドアを開けた。
 月明かりに照らされ、コンクリートの床の上のそれが横たわる人影と気づくと、工藤は我を忘れて駆け寄った。

 


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