お前の夢で眠ろうか 77

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「我々の留守にひとりで何とかしようなんてするからこんなことになるんだ。工藤さんがずっとついてたんだよ? 君が目を覚ますまで」
「ずっと…社長が…?」
 パタン、とドアが閉じる。
 病室には髪も乱れ、疲れた表情を隠せない工藤が傍らにひとり残った。
「申し訳、ないです。社長…、仕事の邪魔ばっかしちゃって」
「んなこたどーでもいい! あの時たまたま上を見上げたからよかったようなものの」
「すみません、社長…」
 神妙な声は尻すぼみになる。
「お前が死んだら、この世は終わりだなんてことまで考えたんだぞ、この俺が」
「え…?」
 何か今天地がひっくり返りそうな科白を聞いた気がする。
「てっきりお前は定期入れの写真の彼女とイブを過ごしたいんだと思ってた」
 良太は目を丸くする。
「定期入れの彼女って、俺、ナータンと妹の写真しか…」
「妹? あの美人、お前の妹なのか?」
「いつ見たんです?」
「クソ、それを早く言え! お陰で俺は散々二の足を踏まされたんだ」
「俺の大事な野茂の定期入れなんですよ? そういや、失くしたと思ってた定期入れがデスクの引き出しから出てきたから変だと思ってたんだ…」
「ハハ…全く俺としたことが」
 工藤は大いに声を上げて笑う。
 勝手に見ないで下さいよ、とブーたれる良太の声はいつもと違って弱々しい。

 


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