お前の夢で眠ろうか 78

back  next  top  Novels


 工藤はそんな良太の姿に胸が痛くなる。
 思わず良太に覆い被さり、その煩い唇をしばらく塞いだ。
「工藤さん…小林先生がいるくせに、セクハラしないで下さい」
 蕩けそうなキスの甘さに、目を潤ませた良太が弱弱しく抗議する。
 するとすぐ、とんとんとドアがノックされた。
「あの、お見舞いにきて、いつ入ろうか、ってさっきから廊下で待ってたんやけど」
 ドアが開いて飛び込んできたのは、小林千雪その人だ。
「誤解やから! 俺と工藤さん、そんな関係やないて。みんながからこうてるんを本気にせんといてや。一応相手は別にいるし、俺」
 必死な声で小林は良太に訴える。
「ほな、お大事に! お邪魔様!」
 言うことだけ言うと、とっとと小林は出て行った。
「何だ、お前、千雪を妬いてたのか?」
 良太の頬がかあっと熱くなる。
「だって、あ、あんたの方は、小林先生にベタ惚れのくせに…これ見よがしに先生に誘いかけてたじゃねーかよ」
「…社交辞令ってやつだ」
 奈々と親密そうだったり、定期入れの妹の写真を彼女と思い込んでやきもちを焼いていたなどとは口にはできず、工藤は適当に言葉を濁す。
「胡散臭ぇ…田所夫人とかはどうすんだよ?」
「心配するな。彼女とも切れた。嬉しいか?」
 からかうような口調の工藤に、
「ふざけんなよ! 俺なんか男で、小林先生みたくきれーでもねぇし、借金はあるし…、今度のことで別にあんたに恩を売る気はない。俺が勝手に……」
 少し声を上げると怪我をした腹に痛みが走り、顔だけいじいじと背けた。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ