お前の夢で眠ろうか 79

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「誰が恩なんか売られるか! どんだけ心配させりゃ気が済むんだ、このバカヤロ!!」
「どうーせ、俺はバカだよっ…小林先生とは大違いだし。もう、ほっとけよぉ」
 強がって喚き散らした良太は、また痛みに涙目になる。
「だからバカだってんだ! 俺はやたら病院に担ぎ込まれるバカの世話で手一杯なんだ」
 良太は工藤をまじまじと見つめた。
「……誰も世話なんか頼んじゃいねーよ」
 つい捻くれた科白も出てこようというものだ。
「拗ねるな。とにかく今後一切、俺の許可なしで勝手をやるのは許さんからな」
「…俺にはまだ大リーグ挑戦計画があるんですからね。そしたら契約金ですっぱり借金も返してやる」
 きっぱりすっぱり言ってやりたいところだが、いかんせん力が入らないので、空タンカになってしまう。
「ジョークにしたって、モヤシみてーな自分の身体を顧みてからにしろよな」
 工藤はせせら笑った。
「モヤシって、ひっでー! そりゃ、ないっしょ? シャチョー…っいてぇ…」
 ぐすぐす鼻をすすりながらまた痛みに顔を顰めるが、工藤はてんで相手にしない。
「とりあえず、モヤシ坊主のご要望に応えてやらなけりゃな」
 へ? と良太はしばし工藤の顔を見ていたが、もう死ぬのだと思い込んで、ぎゅってとかなんとか口にしてしまったような………うそ、あれって夢じゃなかったんだ!?
「ち、ちがう、あれは…」
 良太の顔はユデダコ状態だ。
 すぐにも病室から飛び出したいが、如何や身体は動かせたものではない。
「怪我人はおとなしく寝てろ。退院したら、しばらく軽井沢で過ごすか、な?」
 ニヤリと、笑う工藤。
 工藤の言葉に一喜一憂する自分が、良太はちょっと悔しい。

 工藤が良太とできあがってしまったと、前代未聞のニュースとして、社内はもとより、山内や下柳の耳にまで届いていようとは、知る由もない二人だった。

        おわり

 


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