夢のつづき12

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 まったく、あんなことを言うつもりはなかったのだが。
 オフィスのドア越しに藤堂と笑っている良太を見て、つい苛ついたのだ。
 俺はガキか。
 工藤はひとつ大きく息をつくと、ロビーあたりにドリンク剤でもないかとエレベータで降りる。
 自販機でドリンク剤を買った時、ちょうどフロントマンがいたので、何か薬はないかと聞くと、案外親切に薬を探してくれた。
 ドリンク剤と薬が効いたのか、朝起きて汗をシャワーで流すと少しすっきりした。
『ちゃんとまともに食事しないからだ』
 良太の声が聞こえてきそうで、工藤はホテルで無理やり朝食を取った。
 ロケ地に赴くと、凍えるような寒さの中、撮影が始まった。
「ど素人を使うなら、せめて台詞の丸暗記くらいさせておけ!」
 こき下ろされたマネージャは思わず首を竦める。
「ど素人にリテイクなしでやれとは言わない。リテイクってのは前より良くなるってのが前提だ。前より後退するってのはどういう了見だ! 周りの先輩俳優に学芸会の片棒を担がせるんならちょっとでもおつむを使って考えたらどうだ!」
 主役に据えられた若手タレントは、工藤が頭ごなしに怒鳴りつけるのを、唇を噛んで神妙に聞いていた。
そんな工藤を何様だというように反発するスタッフもいたが、次のカットで即OKが出ると、何も言えなくなるのだ。
工藤にしてもここのところのイライラが積み重なっていた上に、あり得ない芝居を目の当たりにして、つい雷を落としてしまった。

 


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