夢のつづき13

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 昔と違って今の若者は打たれ弱いから、追い詰めるようなやり方はどうたらという考え方が蔓延しているが、工藤の中では、俳優なんぞできないならやめてしまえ、なのは今も昔も変わらない。
 お願いしてやってもらうような代物ではないのだ。
 良太に未だに坂口なんかまでが役者をやらないかなどと言っていたが、良太ならやらせればそこそこやっただろうことは、このぽっとでの役者の下手糞さを見せられれば、頷かないこともない。
 それでもど素人はど素人なりに若干気合も入ったのか、午前中のカットは何とか撮り終えた。
 ディレクターの石田とは周知の仲だが、工藤より少し若い、前へ前へとチャレンジしていくタイプの男で、昼は近くの喫茶店に入り、撮影シーンについて意見をやり取りしながら石田が勝手に頼んだ大盛りカレーを工藤も食べる羽目になった。
 無理にでもカレーを食べてよかったと思ったのは、夕刻に近くなるにつれて半端ない寒さに見舞われたからだ。
 さすがに北海道だと、思い直すまでもなく辺りは吹雪いてきた。
 そんな寒さも後押ししたのか、午後はリテイクも少なく陽が落ちる寸前に撮影は何とか終了した。
「今日はありがとうございました。大丈夫ですか? 工藤さん、なんか目が潤んでるし、風邪でしょう? 俺の移したかも」
やっと終わったかと思いつつ、しばしぼんやり突っ立っていた工藤は、目の前にハイ、と風邪用のドリンク剤を差し出されて少し工藤は面食らう。
 今日一日、ああでもないこうでもないと怒鳴りつけたそのタレントは本谷和正、今人気上昇中の有名プロダクション所属タレントだ。
 イケメンだ何だと騒がれ、人気が先走りしただけで事務所にいきなり主役を張らされた、ろくでもないタレント、として工藤の中では分類されていた。

 


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