夢のつづき21

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 思案にふける良太にその答えがもたらされたのは数日後のことだった。
「せっかく、スケジュールあいたから旅行行こうと思ってたのに、工藤さんが入れたんだって、わけのわからない小さい仕事いろいろ。それも、地方まわりみたいな仕事ばっか」
 疲れたぁ、とアスカは入ってくるなり、早速工藤の文句を言う。
 中川アスカ、青山プロダクションの看板女優である。
 社長の工藤が、例え縁を切っているにせよ、広域指定暴力団中山会会長の甥という出自の関係もあって、青山プロダクションに自ら席を置くとすれば、社員もタレントも、わけあり、な人間がほとんどだ。
 何せいくら募集をかけたところで、それを聞くと九十九%回れ右で帰っていくわけで。
 そこへいくと、テレビ局と合同でオーディションをかけた南沢奈々以外では、ただミステリー作家小林千雪が好きで、その原作を映画化したという理由だけで事務所に入るなどというのは、このアスカくらいだろう。
 ツワモノといっていいかもしれない。
 かつては業界で鬼の工藤と呼ばれて恐れられた工藤がどんな雷を落とそうが、さほど身にしみたためしがない。
「賢次郎? さあ、知らないわよ。何? それ」
 ひょっとしてアスカなら知っているかもと、良太は「賢次郎」という名前に心あたりはないかとたずねてみた。
「いえ、別に。いいんです。忘れてください」
「賢次郎って……どっかで……なんか、そう、芽久の元彼の名前がそんなんじゃなかったっけ」
 さすが、カンのいいアスカである。
 良太が口にするなら、芽久に関係した男の名前だと、記憶に照らし合わせたのだろう。

 


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