夢のつづき30

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 あっという間の出来事に、良太は一歩遅れたものの、またすぐ立ち上がってナイフを構えた男の前に立ちはだかった。
「バカヤロ! 退け、良太!」
 工藤は怒鳴ったが、すごい力でしがみつく芽久に動きを阻まれる。
 今井は車の傍に突っ立ったまま、おろおろしているばかりだ。
「邪魔すんな!」
 血走った目を良太に向けて、岸が怒鳴る。
「目を覚ませよ! こんなバカなことやってどうすんだよ!」
 良太は二人を庇うように両腕を開いて叫んだ。
「るせぇ! るせぇ! 何だ、お前! 退けよ!」
 ナイフを振り回して岸が喚き散らす。
 工藤がしがみついている芽久を引き剥がして動こうとしたその時、岸は背後から腕をねじ上げられ、ぎゃあっと情けない悲鳴をあげると、次には足を救い上げられ地面に叩きつけられた。
 あっけに取られている良太の前に、背中からライダースブーツで岸を踏みつけながらすくと立った長身の男。
「ぼっとつっ立ってんなよ、早いとこ警察呼べ」
 岸の手からナイフを奪って放った男は、不遜な顔で良太に命令した。
「有吉」
 工藤が男の名前を呼んだ時、良太は我に返ったように携帯で警察を呼び出した。
 悲鳴をきいたホテルのガードマンもようやく駆けつけ、有吉が放れると暴れる岸を三人かかりで押さえつけた。

 


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