夢のつづき33

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 ちぇ、俺が犬死してあんたに迷惑かけるかよ! 犬には犬の意地ってもんがあるんだ、チクショ!
 心の中でその背中に毒づく。
 胸が痛い。
 俺のちっぽけな思いが、ワールドワイルドなあんたなんかにわかってたまるかよってんだ!
「帰るぞ、良太。車は地下か?」
 思わずコブシをにぎっていた良太に、現実の冷ややかな命令が下る。
「…はい」
 低気圧は依然として衰えそうになかった。
 
 
 
 
 良太の運転するジャガーはホテルを出て青山通りを走り、外苑東通りに入る。
 後部座席に乗り込んだ工藤はいくつか電話をしていたが、妙に静かだ。
 良太が何気なくバックミラーを見ると、受話器を片手に窓に目をやる工藤の横顔には疲労の色がはっきり現れている。
 そんな工藤を見ると、また心が軋む。
 ただでさえここのところオーバーワークもいいとこなのに、今日の事件であちこちの仕事に支障をきたしたはずだ。
 それを挽回するために、また、オーバーワークかよ。
 ハンドルをきりながら、良太は自分の無力さが情けなくなる。
 『へっぴり腰のくせに、威勢だけはいっちょまえかよ』
 まさしく戦場を通り抜けてきた有吉からみれば、良太など能天気なお気楽野郎に見えるのだろう。
 どんなに背伸びしたところで、工藤と渡り合えるほどの力などないのだ。
 会社まで十五分ほどの道のりが重かった。

 


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